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バイデン氏「反日で親中・親韓」は本当か 日韓の関係改善に動いた過去 - livedoor

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バイデン氏は過去に日本と韓国の関係改善にも動いている(写真:REUTERS/Kevin Lamarque)

日本の首相官邸および外務省界隈は、バイデン政権下の今後のアメリカとの関係を憂いているようだ。官僚や与党政治家は、民主党は「反日」で「親中」、またはさらに悪しざまに「親韓」とだと喧伝している。バラク・オバマ前大統領と当時の安倍晋三首相との関係が冷めたものだったと指摘する人もいる。

だが、オバマ政権時に国務省や国防省の元高官や、ジョー・バイデン氏の顧問などに話を聞くと(政権移行期間という微妙な時期のため、多くは名前を出したくないということだった)、日本側の見方とはまったく違う見解を示す。

彼らの見解は概ね以下のようなものだ。次期大統領バイデン氏は、オバマ大統領政権下で副大統領を8年務めているだけでなく、アメリカ上院議員も36年務め、そこでは外交委員長を2度経験している。こうした経験をホワイトハウスに持ち込めるということは重要なことだ。バイデン氏は優れた政治家で、国内の政治による外交政策の障壁にも敏感であるが、対外関係を構築するのに個人的な関係を駆使する能力にも自信を持っている――。

日本は重要な同盟国という認識

バイデン氏は自らの個人的な悲劇的体験(最初の妻と娘の死、そして、のちに長男の死)および歴史観、そして自身のアイルランド系の伝統にも影響を受けている。 外交政策に「ギリシャ悲劇の感覚だけでなく個人の運命の大切さ」 を持ち込むのだ、とある民主党幹部補佐官は語る。「彼は、個人間の外交を信じていて、これはオバマ大統領のやり方だが、ドナルド・トランプ大統領は共感の欠如から絶対にやらなかった方法だ」。

上院議員、また副大統領としての経験から、ある議会補佐官はバイデン氏を「アジア的外交術にたけている」と評す。「同盟の信奉者。それは彼という人間の基盤になっている」。次期政権の主要目標には、パンデミックに打ち勝つこと、気候変動に取り組むこと、 経済成長を回復させることなどがあるが、その中で、同盟関係は主要目標の中枢をなしている。

バイデン氏の同盟関係中心の考えは、冷戦および、ソ連、NATO同盟諸国の持つ役割にかつて注視していたことから形作られたものだ。 当時の上院多数党院内総務(後に駐日大使)のマイク・マンスフィールド氏に外交委員に任命されたバイデン氏は、西ヨーロッパが自身の守備範囲であるが、アジアの話になると、長年の補佐官で日本をアメリカの重要なパートナーと考えている人々の影響を受けている。

実際、バイデン氏は2013年12月の日本、中国、韓国でも重要な役割を果たしている。オバマ政権は、アジアへの関心を深める「方向転換」をしており、その戦略のカギとなるのが、 環太平洋パートナーシップ(TPP)締結に向けた交渉だった。

中国との緊密な連携への期待は、中国が東シナ海および南シナ海で軍事力を誇示する動き強める中、薄れつつあった。一方で、北朝鮮はその年2月に、数多くのミサイル発射実験とともに、3度目の核実験を行っていた。

こうした中でアメリカは、日本と韓国が安全保障のため緊密な連携を持ち、中国に対抗しうる3国間の協力を望んでいた。だが、中国政府との関係改善を熱望する保守的な朴槿恵氏が大統領に就任したことで、より中国と接近するのではという「懸念」が高まっていた。

日本の歴史認識に懸念を抱いていた韓国

一方、朴前大統領は安倍晋三前首相に対しては完全に心を開いていなかった。というのも、2012年12月に首相になってから安倍前首相は、以前の日本政府の戦時の歴史問題に関しての声明、特に、1995年に発表された戦争に対する談話、従軍慰安婦に対する河野談話と村山首相の声明を後退させる態度を見せたからである。2013年の秋までに、日韓関係はほとんど冷え切っていた。

2013年11月に、中国が、領海の空域を「東シナ海防空識別区」とする設定(日本、韓国、台湾が行政管理する領土を含む)を発表した。 中国の挑発的な動きは、バイデン氏が12月2日に東京に到着した際の最重要課題となっており、「方向転換」とTPPはさらに急を要するものとなっていた。

「北東アジアは、アメリカにとって最も重要な2つの民主主義国が協力して共通の脅威に立ち向かえば最強になる。そして、アメリカ、日本、韓国の3国間で共通の利害、価値観を前進させれば最強だ」と、バイデン氏は訪問に先駆けて朝日新聞に語っている。

バイデン氏は日本を訪問した際、水面下で安倍前首相に対して、朴大統領に手を差し伸べ、日韓首脳会談を開催する必要があると圧力をかけた。安倍前首相との会談を終えたバイデン氏は、首脳会談が開かれると確信を得ていたという。アジア地域に駐留していた元国務省高官によると、バイデン氏の顧問の反対を受けながらも、バイデン氏はこれを推し進めた。

「われわれは、日韓関係の改善を望んではいたが、バイデン氏が自らこれにかかわることには慎重だった」と、この高官は振り返る。アメリカ側は安倍前首相がTPPに前向きであるなど同盟関係に積極的であることに満足していたが、「安倍首相の歴史認識については評価しない向きが強かった」。それでも、この問題には介入しないというのがアメリカでは不文律だったが、バイデン氏は「これを変えられるという自信を持っていた」。

バイデン氏は次に中国に向かい、習近平国家主席やほかの中国首脳陣と5時間にわたって会談し、中国が、北朝鮮政府が交渉の席に戻るための手助けするよう説得できることを期待しながら、発表された東シナ海防空識別区の棚上げと日本と韓国との連携を強化するよう迫った。

最後の訪問先は韓国で、ここでのバイデン氏と朴大統領の対談は、いささか難しいものとなった。ほとんどの時間は防衛費の負担増について費やされ、それから安倍前首相は朴前大統領に会う準備があると話し、首脳会談に参加するよう圧力をかけた。

その後、私とスタンフォード大学の同僚が朴前大統領と面会したとき、同大統領は明らかにバイデン氏からの圧力に動揺していた。韓国政府は、アメリカが日本の意図の解釈を誤っていると、はっきりと感じていたのだ。朴前大統領によると、彼女自身は日本と協力関係を強めるつもりで大統領職に就き、日本と連携する準備もできていたが、安倍前首相や麻生太郎前副首相は、歴史問題に対する以前の日本の立場を無視したり、変更したりしようとしていた。

「会談の機会を閉ざすつもりもないし、対話は重要だと思う」と朴前大統領は語っている。「首脳会談は成功しなければいけないし、そのためには日本はこの問題を持ち出すべきではない」。それどころか、首脳会談で真逆の歴史認識を示したり、靖国神社を参拝する可能性もあると懸念していた。

「靖国参拝」は青天の霹靂

朴前大統領はまた、従軍慰安婦問題にもふれ、「彼女たちの先行きももうそんなに長くないが、これは彼女たちだけの問題ではなく、戦時中の女性の人権にかかわる問題だ。日本がこれを否定するのは受け入れられない」と語っていた。

朴前大統領は、首脳会談を行うには、村山元首相と河野談話の正当性を確認し、挑発的な行動を控えるという日本政府の確約が必要であると主張した。それをバイデン氏にもかなりはっきり伝えたという。

対アジア外交の専門家で、このときバイデン氏に随行したエバン・メデイロス氏は、バイデン氏は「日本と韓国の仲介をしようとはしなかった」と主張する。「バイデン氏は、朴前大統領と安倍前首相双方に歴史問題について持ち出し、双方柔軟で合理的であるよう促しはしたが」。

数日後、バイデン氏は安倍前首相と長時間電話で会話し、自身の外遊と朴前大統領との会談について概要を伝えた。バイデン氏は、朴前大統領に会うよう要請。安倍前首相は、電話では確約を避けたが、アメリカの政府高官やバイデン氏自身も、安倍前首相が靖国神社に参拝したり、それ以外にもサミット開催に向けた努力を無にするようなことはしないだろうという、明確な印象を持ったという。

しかしバイデンの努力は水泡に帰す。アメリカ側が驚いたことに、安倍前首相は12月26日に靖国神社に参拝したのだ。「バイデン氏が自ら介入したのに、うまくいかなかった」と元国務省高官は振り返る。

その知らせがアメリカ政府に届いたのはクリスマスイブのことで、ホワイトハウスはバイデン氏の了承を得たうえで、大使館が異例の声明を出すのを許可した。それは安倍前首相に対する「失望」を表明したものだった。「アメリカ政府全体が安倍首相に怒りを感じていたと思う。日本側はショックを受け、本当に心配していた。それがわれわれの狙いだった」。

そのときのことがあっても、バイデン氏は恨みを引きずりはしなかったという。それどころか、今度はオバマ前大統領も巻き込んで3国間の協力を強化するというゴールに向かって動いた。

2014年3月、ハーグでの核セキュリティサミットの本会議外で、オバマ前大統領は朴前大統領と安倍前首相を3者会談に呼び寄せ、北朝鮮問題を持ち出して結束させようとした。4月にはオバマ大統領は日本と韓国の双方を訪問し、歴史問題を解決させようとした。東京での声明では直接の言及は注意深く避けたが、韓国の過去の苦悩についてははっきり認めた。

翌年、安倍首相と朴前大統領はそれぞれアメリカを訪問した。安倍首相は終戦70周年の声明からトーンダウンして、アメリカ側の懸念に対応しようとした。朴前大統領が夏にアメリカを訪れた際、バイデン氏は副大統領官邸で長時間にわたって昼食を摂り、アイルランド問題と歴史の重要性について語った。

「バイデン氏は歴史問題を明確に理解している」と語ったのは、これらの会談に直接関わった元オバマ政権の高官だ。「バイデン氏の稀有なところは、歴史問題を政策の観点から理解しつつ、政治家としても把握していることだ。これは政治問題であり、その輪郭を理解できるのはリーダー格の者だけだ。圧力をかけるということではない。アメリカにとって重要問題だと理解しているということだ」。

元高官は、会談は有効だったと信じている。朴前大統領は会談後に談話を発表し、安倍前首相と会う用意があると言った。11月の中国を交えた3カ国首脳会議の本会議外で、両首脳はようやく会談。これにより、長期間ストップしていた慰安婦問題日韓合意の話し合いが再開し、12月には合意が発表されたわけだ。

「個人間の外交が重要になる」

今日の日韓関係も似たような状況にある。バイデン政権は、中国への新たな対応を練り上げなくてはならないが、まず優先すべきは同盟の強化だ。そしてここでも、日本と韓国の緊張関係が妨げになる。

では、バイデン氏は自ら関係修復に乗り出すのか。バイデン氏の顧問のほとんどは、彼は誰かに授権するだろうと考えている。おそらくは国務長官に起用されるトニー・ブリンケン氏だろう。オバマ政権下では、ブリンケン氏が日韓を含めた3カ国の副首相級の対話をお膳立てしている。

個人間の外交が重要になるだろうとバイデン氏の顧問たちは言う。菅首相と定期的に会っていた元アメリカ官僚によれば、「菅首相の性格はバイデン氏と付き合うには絶好だ。個人同士ではユーモアのセンスがあり、時には多弁で、鋭く、豪腕だ。バイデン氏といい関係を築く可能性は高い」。

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