マンションでは、騒音トラブルが度々発生する。今回は、マンションの騒音トラブルに悩まされている人に向けて、相談先や対処法、過去の騒音トラブルの裁判例を紹介する。
また、自分自身が騒音を出さないための注意点についても解説する。騒音トラブルに正しく対処し、ストレスなく生活するために参考にして欲しい。
マンションの騒音トラブルの種類
まず、代表的なマンションの騒音トラブルには、下記のようなものがある。
・話し声や子どもの足音、椅子を引く音、物を落とした音などの生活音
・掃除機や食洗器、電子レンジ、洗濯機、乾燥機など家電から生じる音
・浴室やトイレの給排水の音
・目覚ましの音、電話の音などの電子音
・テレビやオーディオ機器の音
・ピアノやギターなど楽器演奏の音
・ペットの鳴き声
・自動車やオートバイの音
・リフォームなどの工事音
・近隣のお店から聞こえる音
意外とさまざまなことが、マンションの騒音トラブルの要因になっていることがわかる。
騒音トラブルは、なんらかの音を一度でも「騒音」だと感じてしまうと、その後は継続的にストレスになってしまうという特徴がある。騒音トラブルを放置せず、早めに対処することが重要だ。
どこからが騒音?騒音の目安と測定方法
騒音の線引きというのは非常に難しい問題だ。同じ音量でも、騒音の内容や時間帯によってストレスの度合いは違ってくる。
たとえば、遊んでいる子どもの声が1時間ほど聞こえていても気にならないかもしれないが、親が子どもをしかりつける声が1時間続けば、ストレスを感じることもあるだろう。また、日中聞こえる家電の音は気にならなくても、夜中に洗濯機の音で目を覚ましたら、腹立たしく思う人は多いはずだ。
また、人によって感じ方が違うことからも、一律の基準を設けることは難しい。こういった理由で、「公害」となるような大きな騒音を除き、近隣トラブルなどの騒音については、全国で統一された規制ルールは存在しない。
ただし、地方自治体によっては、騒音の基準を設けているところもある。たとえば横浜市では、騒音の規制基準を次のように定めている。
午前8時から午後6時まで 50~75デシベル
午前6時から午前8時まで、及び午後6時から午後11時まで 45~75デシベル
午後11時から午前6時まで 40~65デシベル
なお、騒音の基準は用途地域(工業地域か住宅専用地域かなど)によってより細かく設定されている。
また、環境省が定める環境基準も参考になる。環境基準は、政府が環境対策をする際の行政目標なので、環境基準をもとに騒音を発生させている人を取り締まることはできない。しかし、目安としては参考にできるだろう。
療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など
昼間50デシベル以下 夜間40デシベル以下
主に住居の用に供される地域
昼間55デシベル以下 夜間45デシベル以下
住居とあわせて商業、工業等の用に供される地域
昼間60デシベル以下 夜間50デシベル以下
デシベルは音の強さを表す単位だが、イメージしにくい人も多いだろう。そこで、目安として株式会社東京環境測定センターの基準を紹介する。
110デシベル 自動車の警笛(前方2m)
100デシベル 電車が通るときのガードの下
90デシベル 騒々しい工場の中、大声による独唱、犬の鳴き声(正面5m)
80デシベル 地下鉄の車内(窓を開けた状態)、ピアノ(正面1mバイエル104番)
70デシベル 騒々しい事務所、騒々しい街頭、掃除機、電車のベル、ステレオ(正面1m)
60デシベル 静かな乗用車、普通の会話
50デシベル 深夜の市内、図書館、静かな住宅地の昼
40デシベル 深夜の市内、図書館、静かな住宅地の昼
騒音の測定については、騒音計を用いることで、騒音値が何デシベルかを計測できる。騒音計には音を集めるマイクが付いており、測定するとスクリーンに何デシベルの音かが表示される。騒音計は、通販サイトや家電量販店などで数千円程度で購入できる。
マンションの騒音トラブルを放置すると危険
騒音が気になってはいても、具体的な対応のための行動を起こすのは難しいと考える人もいるだろう。一度住み始めたら、簡単に引っ越すわけにもいかない。そのため、ストレスを感じてはいても、がまんすることを選んでしまうことも少なくない。
しかし、騒音を放置した結果、ノイローゼになったり、うつ病を発症してしまったりするケースもある。騒音は、自分で思っている以上にストレスになっていることも多いため、注意が必要だ。
また、騒音のせいで眠りが浅くなれば、健康にも悪影響がある。自分一人ならまだしも、子どもがいる場合などはより深刻だ。自分や家族の健康のため、子どもの健やかな成長のためにも、安心して暮らせる環境を整えることは重要といえるだろう。
マンションの騒音トラブルの3つの相談先
続いては、マンションの騒音トラブルの相談先を3つ紹介する。マンションの騒音トラブルで悩んでいる人は、相談先を活用して悩みを解決することが望ましい。
●管理会社・管理組合
マンションに住んでいる場合、騒音トラブルの最初の相談先として考えたいのが、管理会社や管理組合だ。管理会社や管理組合が騒音を発生させている住人に注意喚起した結果、騒音トラブルが解決することもある。
騒音トラブルの中には、騒音を発生させている自覚がないというケースも少なくない。良識ある住人であれば、注意を受けたことで、騒音を発生させないよう十分な注意を払ってくれるようになるだろう。
●弁護士
騒音トラブルについて、もう少し事態が深刻になった場合、相談先として検討したいのが弁護士だ。
当事者間で話し合いをした結果、関係性がこじれてしまった場合や、管理会社や管理組合が注意喚起をしても行動が改善されない場合、早めに弁護士に相談するようにしたい。
弁護士は法的トラブルを解決する専門家だ。弁護士に相談することで、早期解決をはかり、穏やかな生活を取り戻すことができるだろう。
●警察
どうしてもトラブルが解決しない時は、警察に相談するのも1つだ。ただし、警察に相談する場合は、十分な証拠を集め、騒音トラブルに関する知識を入念に準備してからでなければ、真剣に取り合ってもらえないことも少なくない。
マンションの騒音トラブルを解決するには?
続いて、マンションの騒音トラブルを解決するための手順について解説する。
騒音がストレスだと感じたら、まずは管理会社や管理組合に連絡しよう。最初は、貼り紙や回覧板などで、「誰が」「誰に対して」というのを明確にせず、「騒音に気をつけましょう」といった穏便な注意喚起をすることになるだろう。
この時点で騒音がやめば問題ない。しかし、騒音が続くようなら、管理会社や管理組合に再び連絡し、もう少し踏み込んだ注意喚起をしてもらう。続いては、「誰が」は明確にしないまま、「誰に対して」の部分は明確に注意喚起することになる。
具体的には、管理会社や管理組合が、騒音を発生させている住民に対して、騒音を発生させないよう要請することになる。どうしても騒音がやまない場合、退去を促すといった対応をしてくれるケースもある。
しかし、管理会社や管理組合によっては、貼り紙を貼る程度で真剣に対応してくれないということも少なくない。また、騒音の出どころについて、はっきりと確信が持てない場合もありうる。さらに、管理会社や管理組合が退去を促しても相手方が応じないことがある。こんな時、強制的に退居させるのは難しい。
ここまできたら、騒音が起きた日付や時間帯、騒音の内容を記録として残しておくといいだろう。可能ならば騒音計を購入し、騒音を測定して記載しておくとなおいい。
ある程度の記録がとれたタイミングで、弁護士に相談することを検討すべきだろう。
その際に、大切なことは、当事者間での話し合いは避けることだ。あまりに騒音がストレスだと、いっそ乗り込んでいきたいと思うこともあるだろう。しかし、当事者間で話すことで、より大きなトラブルに発展してしまうことも少なくない。
トラブルの解決は管理会社や弁護士に任せ、相手の怒りが自分や家族に向かないよう注意することが重要だ。
マンションで騒音を出さないためにできること
騒音トラブルについて悩みを抱えるようになると、逆に自分たちが騒音を出していないか不安になる人も多いだろう。
騒音を出さないためには、家電を使う時間を意識したり、必要に応じて防音シート等を利用したりといった方法がある。また、窓を二重サッシにしたり、大きめの家具を壁際に置いたりすることも、騒音を出さない工夫として効果がある。
大切なのは、時間帯と自分たちが出している音を意識することだ。そうすることで、自然と「周りはうるさくないかな」という配慮が働くようになる。
マンションの騒音トラブルの裁判例
続いて、マンションの騒音トラブルの裁判例を紹介する。
Xは、上階で幼児が走り回ったり、飛んだり跳ねたりする音がひどくなったため、管理人に相談した。管理組合は管理組合名で、子どもの室内騒音発生を抑えるようにとの書面を配布した。その後、Xが手紙を投函したり、警察に相談し警察官が上階を訪れたりしたが、解決にはいたらなかった。
Xは騒音を測定したうえで、まずは調停を求め、相手方が調停に応じなかったことから、慰謝料200万円及び弁護士費用40万円の合計240万円の支払いを求めて提訴した。
裁判所は「子どもが住むことを想定したファミリータイプのマンションとはいえ、測定された音はかなり大きく、深夜にも及んでいたこと」や「Xの妻に咽喉頭異常感や不眠等の症状が生じたこと」を理由として、慰謝料30万円と弁護士費用6万円の支払を命じた。
マンションの騒音トラブルを早期解決するために
上述したように、騒音トラブルは慰謝料の支払いに発展する可能性もある深刻な問題だ。マンションの騒音トラブルを早期解決しようと思うなら、早い段階で弁護士に相談することが大切だろう。裁判にまでいたらなくとも、騒音トラブルを解決するための法的なアドバイスを受けることができる。
最近では、万一の場合や病気・介護に対して生命保険で備えておくように、法的トラブルに対して弁護士保険で備えておく人も増えている。
弁護士保険では、弁護士に無料で電話相談できるサービスが付いていることも多い。こういった無料サービスを活用すれば、トラブルが発生した際に、速やかに相談できるだろう。
騒音トラブルは、精神衛生上も健康上も深刻な影響をもたらすことがある。騒音トラブルに巻き込まれた場合の備えとして、弁護士保険を検討してみてはいかがだろうか。
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August 18, 2020 at 02:00PM
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