所有者不明土地の解決策はサブスクリプションにある!? vol.2
片野洋平(明治大学 農学部 准教授)
最近、日本全国の所有者不明土地の面積は九州全土を上回る、などという報道がなされ、人々に衝撃を与えました。所有者不明の土地がなぜ生まれるのか、それはどんな問題を引き起こすのか。そして、どう対策すれば良いのか。この問題に長年たずさわってきた研究者が本学におります。
◇売ろうにも売れない、自治体も引き取らない、田舎の土地
さらに問題なのは、所有者不在土地は、日常的に、誰にも管理されず、放棄されたままであるということです。それは、全国で確実に増えています。
すなわち、災害時にスピーディな復旧の妨げになるだけでなく、日常的には、家屋がお化け屋敷のようになり、野生動物が棲みついて獣害を発生させたり、瓦などが飛んで付近の住民にけがを負わせることもあります。
田んぼは雑草だらけになり、自然のダムの機能を果たせなくなったり、手入れがされない山林は、豪雨時などには地滑りや山崩れの原因にもなるという指摘もあります。
一方で、都会に居住する所有者も、管理のために手間やお金をかけたり、固定資産税を払うなどの負担を負うことになります。
例えば、登記しなければ固定資産税はかからないと思っている人がいますが、登記をしなくても、相続権者には納税の義務が生じます。
4代前に登記されたままの土地の税金を、そこで農業を継いだ、例えば長男だけが納めていたのは、代表相続人という立場になっていたからです。
つまり、都会で暮らす相続権者にとっては、自ら活用することのない土地で負担を強いられることになるわけです。
そこで、そうした人たちは土地の売却も考えます。ところが、現実には買い手がつかず、売れないのです。
そもそも、子どもたちが都会に出て行ったのは、実家の土地が狭く、農業の収入が少ないことが理由であることが多いのです。そのような土地を購入しようとする人は、まずいません。
また、近隣で農業を続けている家も後継者不足、人手不足になっており、耕作地を広げる余裕はありません。
また、自治体なども、インフラの整備や歴史的価値のある場合などを除けば、土地や家屋を買い取ることはありません。
つまり、所有者不明土地問題とは、所有者不在の土地を抱える地域だけでなく、都会で居住する所有者にとっても重い負担になっていて、しかも、手放すこともできず、その解決策が見えない問題になっているのです。
※取材日:2020年1月
次回:縁に目を向けることによって自分の可能性を広げることもある(5月21日12時公開予定)
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