新型コロナウイルス感染拡大の影響により、外出の自粛や在宅勤務が要請され、誰もが家で過ごす時間が増えている今。思うように気分転換もできず、ストレスが溜(た)まる中で家族との関係が悪化し、トラブルに発展するケースも見受けられている。SNSでは「コロナ離婚」という言葉も生まれた。
コラムニスト・犬山紙子さんの新刊『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』には夫婦関係を修復する具体的な100個のヒントとともに、様々なライフスタイルを送る夫婦のインタビューが掲載されている。
前例のない事態の中で、家族が平穏を保つにはどうすればいいのか。犬山さんに聞いた。
どんな夫婦にも“メンテナンス”が必要
「私の周囲でも、結婚前からとても仲のいい夫婦でさえ、産後には『離婚しようか考えている』と話しているのを聞きます。そのようなケースは1人2人ではありませんでした。どんなに仲がいい夫婦でも“メンテナンス”をしないと関係は悪化してしまうんだなと思いました。これは人ごとではなく、私たちも何もしなければ関係が壊れてしまう可能性がある。それをなるべく防ぐためには既に問題を乗り越えた人たちからリカバリー方法を聞くことが必要だなと思ったのです。」
夫婦とはいえ、他人同士。「夫婦だから大丈夫」というのは幻想に過ぎず、仕事上のやり取りのように調整が必要なのだ。
調整するために必要なのは知識と技術。犬山さんは専門家の話を聞き、様々な夫婦に取材することで、抽象的な励ましや感情論ではなく、できるだけ具体的なメソッドを書くように努めたという。
夫婦が互いの抱える問題を自覚するために、まず最初にするべきことは何だろうか。
「まず想定することです。このまま不安定な状態が続いた時に、自分がどれくらいギスギスしてしまうか。どれくらい自分や相手のメンタルがダメージを受けるのか、どの程度お互い余裕がなくなってしまうのか、余裕がなくなった先に起こりうる喧嘩(けんか)を予想します」
何が不安で、相手に何を求めているのか。問題に直面してからではなく、あらかじめ考えておくことで心に余裕が生まれるという。
問題をすべて解決するには時間を要するので、夫婦間の心配事の優先順位をつけておくべきだろう。
「察してほしい」はルール違反
自分の中で解決したいことが決まったら、それを夫婦で話し、すり合わせる。犬山さんの著書でも強調されるのが相手の気持ちのヒアリングだ。
「パートナーに『今一番辛(つら)いことって何?』と聞くこと。私がそれを聞いたからといって、例えばコロナウイルスを消せるわけではないし、何ができるわけではないのですが、『その孤独や辛さをあなた一人で背負ってるんじゃないよ』と伝える。相手の中から孤独感を消してあげると、それは二人で持ちこたえられる辛さに変わるんですよね。寄り添う気持ちを意思表明することが重要です」
話し合う前提として、「自分はあなたの敵ではない。一緒に問題を解決するパートナーだ」としっかりと伝え、相手の気持ちを確認しあう。「夫婦なんだから味方なのは当たり前、言わなくてもわかる」というのはコミュニケーションの怠慢で、ちゃんと言葉にしなければ伝わるものも伝わらなくなってしまう。「言わなくても察してほしい」はルール違反だという。
犬山さんは様々な夫婦を取材して気づいたことがある。
「本当にしてほしいことを言い出せない原因は『これを言って相手を傷つけたくない。では自分が耐えればいい』という優しさだとわかりました。でも、その優しさは不満となって自分の中に溜まってしまい、結局爆発してしまいます。ちゃんと言葉にするべきです」
なかなか本音を言ってくれないパートナーには、『まとまってなくても言ってみて』と促すことも必要になる。話すことを通して自分の言いたいことや気持ちが整理されることもある。話すことが苦手であれば、メールなど文章にして伝えるのも手段の一つだという。夫婦関係には正解がない。二人で向き合って話し合うことが大切だ。
“ファクト”を積み重ねて相手をリスペクトする
在宅勤務になり、普段家にいない相手が一日中家にいると、家事分担のバランスが崩れて口論になってしまうことがある。「相手も家にいるのに、なぜ私ばかりが家事を……」と不満に思ってしまう気持ちをコントロールするにはどうすればいいのだろうか。
「『なんで私ばかり』と思うことは当然。お互いの仕事量を可視化するのが解決策の一つです。普段相手がどんな仕事をしているかパートナーが知らないということも多いですよね」
ここで重要なのは話し合いをする前に“ファクト”を提示することだという。
夫は一日何時間仕事をしているか。妻は家事をどれくらいやっていて、どんな作業をしているか。育児に関してはどうか。こういったファクトを集めて、相手に説明しわかってもらう。事実を突き合わせた上で話し合えれば、感情的にならず解決の近道になる。
家庭を一つの会社だと想定した時、これはプレゼンにあたる作業なので、資料づくりは必須だ。
相手の作業や仕事を知り、そして互いにリスペクトしあう。疑問に思ったことがあれば素直に質問することはあっても、上からダメ出しは決してしてはいけない。
これは仕事に限ったことではなく、相手の趣味嗜好(しこう)に関しても同じで、否定せずリスペクトすることが必要だ。
リスペクトがなければ、どんなに同じ場所に長い時間いても人間は孤立してしまう。
本当の意味で「自立」するには
夫婦で話し合うことの重要性が語られたが、すでに関係に不和があり、話し合えない状況の夫婦はどうすべきだろうか。
「まず試すべきは第三者の力を借りることです。一緒にカウンセリングを受けに行くことができれば一番いいですね。今はオンラインでカウンセリングを受けることもできます。カウンセリングが難しいようなら、パートナーが尊敬する人に相談して、間に入ってもらうことも有効です」
日本ではいまなお「家族の問題は家族で解決するもの。他人に迷惑をかけてはいけない」という風潮があり、家庭の外にSOSを出す術を教えられていないことが多い。「他人に迷惑をかけない」という考え方が「家族には迷惑をかけていい」という考えに転換してしまうことで甘えが生まれ、「察して文化」が生まれてしまう。まずは意識を改める必要があると犬山さんは言う。
「人間、生きていれば必ず他人に迷惑かけるものなので、助けてほしい時にはしっかり迷惑をかけ、しっかり助けてもらう。その代わり誰かのSOSをキャッチできたらその時は自分一人で抱え込まないで、色々な人と結束してその人を救う。それができることが自立だと思います」
また、手を尽くしても関係が改善されない場合は離婚も一つの手段だと語る。
「DV、虐待は論外として、相手に対するリスペクトが全くない人。仕事や家事もやってて当たり前、ありがとうの一言もない。話そうと思っても相手の言うことを一言も聞き入れず『お前みたいなバカは自分に従っていたらいいんだ』という態度。このような人は男女問わずいて、この場合は第三者に入ってもらっても改善が難しい場合があります。“コロナ離婚”と揶揄(やゆ)されても全く構わないので、離婚したほうがいいと思います」
パートナーから自尊心を激しく傷つけられた際、その捌(は)け口として子どもを傷つけてしまう場合もある。子どもを守るためにも、自分を守ることが大切だ。
「夫婦が急に円満になることはありません。必要なのは、お互い同じ方向を向いて、ちょっとずつ良くしていこうって思うことですよね。難しい話をする必要はなく、私はあなたの味方ですよと伝え、お互いに歩み寄る姿勢をとること。これさえちゃんとできていれば、降りかかる不安や問題に、チームで助け合いながら臨めるので結果がぐっと変わってくるはずです」
これほど家族と同じ時間を過ごすことはこの先ないかもしれない。相手の話を聞き、自分の思いを伝える時間は十分すぎるほどある。今日より明日のほうが少しだけ仲のいい家族になれるように、犬山さんの言葉は背中を押してくれるだろう。
(文・張江浩司 写真・林紗記)
プロフィール
犬山紙子 <いぬやま・かみこ>
1981年生まれ。仙台のファッションカルチャー誌の編集者を経て、上京。2011年ブログ本を出版しデビュー。現在はTV、ラジオ、雑誌、Webなどで粛々と活動中。14年に結婚、17年に第一子となる長女を出産してから、児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」を立ち上げ、社会的養護を必要とするこどもたちにクラウドファンディングで支援を届けるプログラム「こどもギフト」メンバーとしても活動中。
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