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バイデン氏が抱えた“爆弾”攻撃不発の大統領に反転の足掛かり - WEDGE Infinity

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WEDGE REPORT

2020年10月24日

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佐々木伸 (ささき・しん)

星槎大学大学院教授

共同通信社客員論説委員。ベイルートやカイロ支局長を経て外信部副部長、ニュースセンター長、編集局長などを歴任。

[執筆記事]

(REUTERS/AFLO)

 11月3日の米大統領選に向けた最後のディベート(テレビ討論会)が10月22日、南部テネシー州ナッシュビルで開かれ、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が激論。逆転に意気込んだ大統領の攻撃はほぼ不発に終わった。だが、バイデン氏が「石油産業の閉鎖」に踏み込んだ発言をしたことで激戦州に“爆弾”を抱えることになり、大統領は反転への足掛かりを得た格好だ。      

石油産業を破壊しようとしている

 今回のディベートは投票日前の最後の直接対決の場だった。ディベートは当初、3回計画されていた。しかし、トランプ大統領が今月初め、新型コロナウイルスに感染したことから15日に予定されていた2回目がオンライン形式となり、これを大統領が拒否。結果として22日のディベートが最終回となった。

 第1回目は大統領がバイデン氏の発言を再三妨害、これに同氏も反撃して中傷合戦になり、政策論争はほとんど行われなかった。このため今回は、主催者側が、討論議題のそれぞれの冒頭発言の際、一方のマイクを切る措置を導入。大統領も不規則発言を自重し、論戦を交わした。CNNのディベート後の勝敗調査によると、バイデン勝利が53%、トランプ勝利は39%だったが、ほぼ互角というのが一般的な見方だろう。

 大統領はウイルス感染から復帰した以降、激戦州を中心に積極的に遊説を行い、その効果もあってリードを許しているバイデン氏との支持率の差が徐々に縮小。22日現在、世論調査をまとめている「リアル・クリア・ポリティクス」によると、全米平均で7.9ポイントの差となっている。激戦州では、7ポイント以上離されていた東部ペンシルベニアで4.9ポイントまで差を縮め、中西部オハイオでは大統領が逆に0.6ポイントリードしている。

 バイデン氏がディベートで踏み込んだ発言をしたのは気候変動についてだ。同氏は争点になっているシェール石油のフラッキング(水圧破砕法)に関しての応酬の際、大統領から「石油産業を終わりにするのか」と問われ、「石油産業を転換するつもりだ。なぜなら、石油産業は大気を著しく汚染するからだ。新しいエネルギーへの転換のプロセスの一環とすべきだ」などと応じた。

 これにトランプ大統領は鬼の首を取ったかのように「それは大きな話だ。ビジネス上、大きな間違いだ。基本的に石油産業を破壊しようと言っている。(石油ビジネスに依存する)テキサスやペンシルベニア、オハイオを忘れていないか」とたたみかけた。米紙は、これはトランプ氏が仕掛けた“罠”と指摘しており、早くも南部オクラホマ州から連邦議会に立候補している民主党候補はバイデン氏の発言に反対の考えを明らかにしている。

 南部テキサスは共和党の地盤で、トランプ氏の優位は動かないと見られるが、シェール石油の生産地であるペンシルベニアやオハイオ、フロリダ各州はバイデン氏の発言に影響を受ける可能性がある。トランプ氏は今後、遊説でバイデン発言を大きく取り上げ、雇用を奪うとして徹底的に叩き、逆転につなげようとするのは確実だ。

 ワシントン・ポストによると、バイデン氏はディベートを終えた後の空港で、発言について釈明。「化石燃料を排除するということではなく、石油会社への補助金を取りやめるということだ」などと記者団に語った。同氏は新エネルギーへの転換で、新たに何千万人もの雇用を生み出すとしているが、トランプ氏につけ入るスキを与えることになったのは事実だろう。

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