2020年10月27日07時09分
【エルサレム時事】フランスのマクロン大統領が、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画が原因とされる教員殺害テロ事件をめぐり、風刺画を「やめることはない」と発言したことに対し、イスラム世界で反発が拡大している。宗教上の冒涜(ぼうとく)を含む「表現の自由」の擁護を掲げるフランスと、預言者冒涜を決して許さないイスラム世界の価値観は真っ向から対立しており、落としどころを見つけるのは困難だ。
50カ国以上のイスラム諸国が加盟するイスラム協力機構(OIC)は23日に声明を出し、「フランスの特定の政治家たちによる、イスラム世界とフランスの関係にとって有害な談話」への懸念を表明。事件は容認できないと強調する一方、「イスラム教、キリスト教、ユダヤ教の預言者への侮辱行為は常に非難する」と述べた。
AFP通信によれば、ヨルダン外務省は「表現の自由を口実とした預言者の風刺画の出版が続いていること」を批判。クウェートやカタールではフランス製品をボイコットする動きが出ている。イスラエルでもアラブ系市民らによる抗議行動が起きた。
トルコのエルドアン大統領は24日の演説で、マクロン氏のイスラム教徒への対応に不満を示し、「精神状態の検査」が必要だと主張。この発言に対し仏政府は「容認できない」として駐トルコ大使を本国に召還する方針を示したが、エルドアン氏はその後も「検査」に言及し、26日には「フランス製品を買うな」と国民に呼び掛けた。
テロ事件はパリ近郊で16日に発生。預言者の風刺画を授業の題材で使った中学校の男性教員が首を切断されて殺害された。現場で警官に射殺された容疑者の男は、風刺画に立腹したイスラム過激派だったとみられている。
マクロン氏は21日に執り行われた教員の国葬で、風刺画について「やめることはない。自由のための戦いを続ける」と訴えた。
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