トランプ大統領の熱狂的な支持者たちは勢いを増しているようだ。しかし、ここにきて、4年前にトランプ氏に投票したものの、今回は民主党のバイデン前副大統領に投票すると決めた人も増えている。共和党支持が根強い田舎町で何が起きているのか。【米中西部オハイオ州アシュランドで國枝すみれ】
「トランプに投票したことを後悔している」。人口約2万人の町アシュランドに住むブライアン・サンプルさん(44)は苦い表情で話し始めた。「トランプは大金持ちだからきっと経済を活性化させてくれて、もっと仕事が増える、と思ったんだ」
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で経済は坂を転げ落ちるように悪化した。一部回復したが、それでも全米の失業者は9月時点で推計1260万人だ。
「コロナの感染拡大で彼の本性が露呈した。自分本位な部分だ。2月にはコロナの危険性が分かっていたのに、国民には過小評価して伝えた。夏になってもマスクをしないで歩き回っていた」
10月2日未明、トランプ大統領は自らのコロナ感染を発表。ホワイトハウスでは14日までに少なくとも31人の陽性が判明した。ホワイトハウスでクラスターを発生させるという危機管理能力のなさを露呈した。
ブライアンさんは引っ越しに使う段ボールを製造する工場に15年勤めている。コロナ禍で段ボールの需要は高まり、個人的な生活に変化はない。だが、周囲には解雇されたり、レイオフ(一時解雇)されたりする人々がたくさんいる。ブライアンさんには4月15日に政府の景気刺激策として1人1200ドルの現金が振り込まれたが、「そんなもので気持ちは変わらない」。
ブライアンさんは怒っていた。
「トランプ政権下の4年間で変わったことは、国民が二つに割れ、お互い憎しみ合うようになったことだ。人種を巡る戦争が始まった」。2017年8月のバージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者とそれに反対する市民の衝突をめぐるトランプ氏の対応にげっそりしたという。白人至上主義を明確に非難しなかったからだ。
ブライアンさんはもともと民主党支持者だ。だが、16年大統領選では民主党候補のヒラリー・クリントン氏ではなく、トランプ氏に投票した。「ヒラリーは、私用メール問題とかいろいろあって、気にいらなかったんだ……」
ブライアンさんのような人は珍しくない。16年11月の大統領選で、オハイオ州やペンシルベニア州のようなラストベルト(さびついた工業地帯)の白人労働者の多くがトランプ氏に投票した。従来は民主党に入れてきた人たちだった。
「その結果が今の米国」。自身はヒラリー氏に票を入れた妻ヘザーさん(42)が嘆く。警察の黒人への暴力に抗議するブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ、BLM)運動に参加するヘザーさんは、トランプ氏の言動すべてに我慢がならない。大統領の演説を聴いていた夫に、言い放ったことがある。「テレビを今すぐ消して! でなければ、私は家を出て行く」
トランプ氏をまだ支持している人は洗脳されているんだ、と2人は推測する。「まるで宗教カルト。もう向こう側に行っちゃって、戻ってこない」。ブライアンさんは言う。
ヘザーさんはトランプ支持者を「トランプ・ゾンビ」と呼ぶ。「人種差別反対」のメッセージを掲げて道に立っていたら、男性が声をかけてきた。「ぜひあなたに見てほしい動画がある」。ユーチューブのアドレスをくれた。毎日のように来て、「動画を見たか?」と聞くので、仕方なく夫婦で見た。
動画の内容は、反トランプの投資家、ジョージ・ソロス氏が、BLMや反ファシズムの「アンティファ」、小児性愛者などを財政支援しているという内容。根拠不明の陰謀論を唱えるグループ「Qアノン」系の主張だった。
「大笑いしたよ。こんなものを信じるぐらい彼らはバカなのか?」。ブライアンさんはあきれていた。
しかし、事態は笑えるような状況ではない。オンライン世論調査会社「Civiqs」によれば、「民主党の政治家やハリウッドの有名人らは小児性愛者の犯罪集団に秘密裏に関与しており、トランプ氏…
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