『紙1枚で仕事の課題はすべて解決する』(阿比留眞二 著、ワニブックス)の著者は、花王式会社で26年間経験を積んだのち、現在は「課題解決コンサルタント」として活動しているという人物。
本書では、A4の紙一枚を使って行うロジカルなフレームワーク「課題解決の技法」を提唱しています。
花王にいたときにチームで開発したメソッドを、14年間にわたって独自に進化させ、現在の形に完成させたもの。
新人、ベテラン、リーダーと、誰でもすぐ使いこなせるようになるのだといいます。
課題解決の技法の一連のステップは、紙1枚もしくはノート1ページで行なうことができるほどシンプルです。
・なんとなく思いついた解決したいことを書き出す(第一課題の設定)
・解決したい課題が生まれた状況を書き出し、グループにまとめる
・グループの中で本当に解決すべきことを「真の課題」として設定
・WHY(なぜ?)を4回繰り返し、真の課題が生まれた本当の原因を確認
・解決策を見つけ、具体的な行動を明確にする
(「はじめに」より)
これを書くだけで、課題解決が可能になって成果が出るというのです。
なお最後のアクションは“実行可能で効果のある行動”に限定されるため、最小の時間で成果を最大化することができるのだとか。さらに自分自身で課題を設定し行動するので、仕事が楽しくなるという効果もあるのだといいます。
きょうは、そんな本書の第4章「紙1枚で仕事のスピードは上がる!」のなかから、「仕事のスピードアップ」に関するいくつかの考え方を抜き出してみたいと思います。
「課題解決の技法」を実践するために、意識しておくべき大切なポイントであるようです。
スピードを妨げる3つのこと
いうまでもなく、仕事にはスピードが求められます。とはいえ実際のところ、仕事のスピードアップを実現することはそれほど簡単ではありません。
だとすれば、どうしたらいいのでしょうか?
この問いについて、著者は次の3つのことを克服すればいいと記しています。
・能力不足
・段取り下手
・他者をうまく使えない、動かせない
(96ページより)
仕事が遅い人は、こうした悩みを抱えているものでもあります。
そこで、まずは自分がどの悩みに該当するかを考えてみて、課題を設定し、改善していくことを考えるべきだということです。
まず、能力不足では仕事のスピードは上がらなくて当然です。そもそも処理スピードが遅ければ、時短で仕事をすることなどは不可能なのですから。
同じように段取りが下手だったとしたら、行き当たりばったりで仕事をすることになってしまうでしょう。そのため、やるべきことを効率的に進めることは困難。
一方、できる人ほど仕事の流れを考えており、アクシデントにも備えているものだといいます。
そして、もしも人を使ったり、動かすことができないのだとしたら、コミュニケーションがうまくいっていないということになるはず。
たとえば自分が作業を終えたとしても、関係者が動いてくれなかったら、仕事は滞ってしまうことになるわけです。
また、ひとりで仕事を抱え込んでしまったら、時間がかかっても無理はありません。
つまり逆説的な観点から上記3つの理由を克服すれば、生産性は高まるということ。
そこで、まずは自分がどれに当てはまるかを考え、もし当てはまらないとしても、より強化したい部分があれば、そこを課題解決の技法で伸ばすべきだというのです。(96ページより)
「なんとなく」を意識化して能力を上げる
「仕事の能力不足」は、多くの人を悩ませているはずです。
能力が不足していれば処理能力が低下するので、仕事のスピードが遅くなるばかりか質まで下げてしまうことになるわけです。
能力不足とは、仕事の習熟度が低いということです。単純に言うと、仕事を覚えていないことになります。
なんとなく仕事をやっているから、スピードが遅いのです。仕事の目的や内容、意味、専門用語や専門スキルを頭に入れることが大切です。(98ページより)
とくに自分が担当する仕事の目的や内容、意味がわかっていない人は、闇雲に作業をこなしてしまいがちでもあります。
そのため、効率的に仕事をすることができなくなってしまうわけです。
また、専門用語や専門スキルは、時間をつくって憶えたり鍛えるしかありせん。ただし、それだけをクリアすれば能力が上がるというものでもないでしょう。
頭に入れたものは、アウトプットすることで身につくからです。したがって、使い方のスキルを学ぶ機会を増やすことが必要。
そして仕事を始める前には、似たような仕事で結果を出している人から話を聞いたり、成功事例を学んでおくことも有効。
仕事の流れが全く分からない状態で、やみくもに作業をしてしまえば、達成できないのは当然です.(99ページより)
ところが仕事の能力を上げられない人のなかには、「他人に聞く」ということができない人がいるのも事実。
しかし、やり方がわからなかったり、新しい仕事に手をつけたりするときには、自分の先を行く人に話を聞くことが有効であるわけです。
なぜなら、上司や先輩などに相談したら、困っていたことがスパッと解決することもありうるから。
逆に、知らないことは、自分だけで解決しようとしても悩む時間が増えるだけです。
でも、「なにから始めればいいのか」というような、ちょっとしたアドバイスをもらうだけだったとしても、結果的にはそれが大きな打開策になる可能性があるのです。
したがって、あまりあれこれ考えず、「能力を克服する」程度の第一課題を設定することが大切。
まずは、そんなシンプルな発想がスタートラインになるということです。(98ページより)
こうした考え方を軸として「課題解決の技法」をわかりやすく解説した本書は、問題解決に関する有効な道筋を提示してくれるはず。
仕事の効率化を実現したいのであれば、参考にしてみる価値はありそうです。
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Photo: 印南敦史
Source: ワニブックス
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