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Jリーグの解決策は? 新型コロナウイルスが苦しめる日程問題。次なる決断に必要な柔軟性と妥協【英国人の視点】 - フットボールチャンネル

見通しを示すのは難しい

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【写真:加藤健一】

 Jリーグが新型コロナウイルスの影響によるリーグ戦中断を最初に発表した2月25日の時点では、その決定はやや予想外だと感じられ、大きな驚きとともに受け止められた。

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 まずルヴァンカップのグループステージ第2節の各試合を延期、さらにその直後に発表された3月15日までのリーグ戦全試合延期という決断は、政府が全国の小中学校・高校に休校を要請するよりも前に下されたものであり、大げさな措置だと捉えた者も少なくはなかった。

 だがそれから2週間が経過し、医療面での状況は全く改善されたようには見えない。マスクが異常な高値で販売されたり、トイレットペーパーの買い占めが起きたり、マスクをしていない乗客が咳をしたとして非常通報ボタンが押され電車が緊急停止したりと、社会全般の不安なムードは高まる一方だ。

 こういった状況の中では、Jリーグの村井満チェアマンが3月9日夜に緊急会見を開き、リーグ中断期間の延長を認めたことも驚くべきことではなかった。今回は4月3日までの中断延長となる。

 この4月3日という日程も、「再開を目指し全力を尽くして努力していく」という目標でしかない。ウイルスが世界各地に大きく拡散し、いつ沈静化するのか、沈静化する時が来るのかどうか誰にも確かな予測ができない状況では、通常通りのリーグ再開がいつになるのか見通しを示すのは難しい。

 今でも満員の乗客を乗せて走り続けている通勤電車を利用するのと、サッカーの試合を観戦するのと、よりウイルス拡散や感染のリスクが高いのはどちらなのかという議論は可能かもしれない。だが本稿はサッカーコラムであり、筆者に医療分野の専門知識が皆無である以上、試合中止の可否についてここで本格的に論じることはできない。

難しい状況に置かれる選手たち

 少なくとも、感染拡大中の新たなウイルスの影響を過小評価するよりも、慎重な対応を選択する方が間違いなく好ましいとは言えるだろう。Jリーグが日本野球機構(NPB)と異例のタッグを組んだことも、可能な限り効果的な形で事態に対処するためリーグ主催者があらゆる手を尽くす姿勢を示している。

 だが当然ながら、リーグ延期の決断は大きな影響をもたらす。ファンもメディアもスポンサーも、普段どおりの試合が行われないことに気落ちしている。エンターテインメントが提供されず、放送や執筆や話題の対象とするべき試合が存在しない。投資に対するリターンがもたらされることもない。そして中断が長引けば長引くほど不満は強く感じられるようになってくるだろう。

 しかし、最も困難な状況を過ごしていると考えられるのは他ならぬ選手たちだ。

 プロのアスリートは、競技が行われる時が来れば万全のフィジカルコンディションを整えられているようにしなければならない。新シーズンの開幕に向けて体作りを行い準備を整えてきた彼らは、わずか1試合を戦っただけで奇妙な保留状態に置かれてしまっている。

 メンタル面でも、明確な目標が見えない状況で十分なレベルのモチベーションを維持し続けることは、信じられないほど難しいはずだ。仕方のないことだとしても、仮の再開日程が一旦提示されたあとに再び変更されるような状況ではなおさらのことだ。

 プレシーズンのトレーニングは苦行だと言われるが、良い状態でシーズン開幕日を迎えるという目標があるからこそ耐え抜くことができる。いつピッチ上に戻ることができるのか誰にも分からない現状で、ただ練習だけを繰り返すのは選手たちにとって非常に困難であり、退屈でさえあるだろう。

五輪そのものが開催される前提だが…

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【写真:加藤健一】

 今回の混乱は、さらにその先にもネガティブな影響をもたらすことになりかねない。

 Jリーグはもともと五輪のために今季のスケジュールに中断期間を設けており、J1は1ヶ月半、J2とJ3はそれぞれ3週間リーグ戦が行われない予定となっていた。現時点ではこの中断期間はそのまま維持される見通しであるため、シーズンの全日程を予定通りに完了させるためには、五輪の前後に多くのミッドウィーク開催を挟むことが必要となってくる。もちろん、五輪そのものが開催されるという前提の上ではあるが。

 FIFAは試合を開催可能な頻度に関してルールを定めているわけではないが、少なくとも2日間の間隔を空けることを推奨している。だがUEFAチャンピオンズリーグの出場32チームを対象として週末とミッドウィークに試合を行った結果による影響を調査し、2010年に『アメリカン・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン』誌に掲載されたデュポン氏らの記事によれば、「2試合の間の休息時間が72時間から96時間であった場合、調査の対象としたフィジカルパフォーマンスのレベルを維持するためには十分だと考えられるが、低い負傷率を維持するためには十分な長さではない」とされている。

 今季のJ1チームはミッドウィーク開催の試合が各8回(リーグ戦3回、ACLまたはルヴァンカップ5回)、J2チームは各4回(ルヴァンカップに出場する松本山雅FCは9回)、J3チームは各2回予定されていた。

 コロナウイルスによる中断の結果、すでにJ1では5節分、ルヴァンカップでは2節分、J2では6節分、J3では3節分の試合が日程変更を余儀なくされている。カレンダーを眺めてみれば、仮に4月初旬から再開が可能になったとしても、選手たちに無理を強いることなく全ての試合を消化するのは困難になりつつあるように感じられる。

常識に囚われてはいけない

 ルヴァンカップの中止、あるいは2011年のようにトーナメント方式での開催とすることをひとつの案として提示する者もいる。だが、確かにそれでJ1の多くのチームには余裕が生まれるとしても、ACLに出場しているチームの問題は解決されないし、前述の松本山雅を除くJ2チームやJ3チームにも効果はない。

 これほどの状況に至ったからには、常識の枠に囚われない考え方が必要になってくるかもしれない。

 例えばJ1においては、各チームが1回総当たりの対戦(計17試合)を行い、その後は上位9チームと下位9チームに分かれてのプレーオフラウンドを開催することも可能かもしれない。上位9チームは1回総当たりの計8試合で優勝チームやACL出場チームを決定し、下位9チームは残留を争う。J2では21試合を行ったあと、上位と下位の11チームずつに分かれる。プレーオフは中止し、上位2チームの自動昇格のみとする形が想定されるだろう。J3はJ1と同じ方式となる。

 もちろんこの提案にも欠点はある。ファンが観戦できる試合数は減少するし、ホームゲームの減少により各クラブは収益を失い、放映権を持つ放送局も中継数を減らさなければならない。だが現在の状況では完璧な解決策を打ち出すのは困難であり、最終的にJリーグがどのような道を進む決断を下すとしても、柔軟性と妥協が必要となってくるだろう。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

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March 14, 2020 at 08:01AM
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