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ターミネーター2のT-1000のような夢の素材「液体金属」とは? - GIGAZINE

by David Kutschke

液体金属が使用されたロボットと聞くと、映画「ターミネーター2」に登場するT-1000を思い浮かべてしまう人も多いはず。しかし、実際には殺人ロボットではなく、柔らかいロボットやウェアラブルコンピューターが実現するとの展望が語られています。

Core Concept: Liquid metal renaissance points to wearables, soft robots, and new materials | PNAS
https://www.pnas.org/content/117/10/5088

「ほとんどの研究者は、他の金属と同様に熱と電気を伝えるのに室温では液体である珍しい素材の、ユニークな特性と用途を知りません。過去数年間で、液体金属の研究はルネッサンスと呼ぶべき変化を遂げています」と話すのは、ノースカロライナ州立大学で工学を研究しているマイケル・ディッキー氏です。同氏は以前にも、3Dプリンターから液体合金を出力することに成功しています。

ターミネーター2のT-1000のような液体金属が3Dプリンターで出力可能に - GIGAZINE


液体の金属としては最も一般的にイメージされているのが水銀ですが、ディッキー氏が注目しているのは水銀とは違ってほとんど無害な金属ガリウムです。ガリウムは蒸発して吸入事故の原因になるようなことがない上に、約30度という低い融点を持っています。また、スズインジウムと混ぜるとさらに融点が低く有用な合金に変化します。

ガリウムを中心とした液体金属は、柔軟なだけでなく電気伝導体としても性質もあるため、柔らかい機械の素材としての使用が主に想定されています。さらに、2019年には北京大学工学院のLiang Hu氏らの研究チームにより、磁気を用いた制御により単体で立体的な動きができる磁性液体金属滴(MLMD)も開発されました。

Hu氏らが開発したMLMDの詳細については、以下の記事を読むと一発で分かります。

「ターミネーター2」のT-1000のように水平方向だけでなく垂直方向にも動く液体金属の開発に成功 - GIGAZINE


ディッキー氏によると、こうした液体金属の制御に重要なのが、空気に触れると「酸化皮膜」ができるという性質です。液体金属に限らずほとんどの金属は空気中の酸素にさらされると酸化皮膜ができますが、液体金属の場合は表面にナノメートル単位の厚さの膜ができて、中の液体金属を保持する皮膚のような役割を果たします。そのおかげで、液体金属は水のようにこぼれたり布に染みこんだりせず、曲げ伸ばししたり、ペンキのように伸ばしたり3Dプリンターで好きな形にすることができたりするのだとのこと。


さらにディッキー氏は、ガリウムとインジウムの合金を強いアルカリ性の液体の中に入れて電圧を印加すると、表面張力で球状の形をしていた液体金属が雪の結晶のような形になることも突き止めました。この性質の有用性は未知数ですが、膜の表面張力を制御することができれば、形状を再構成可能な電子機器や光学デバイスの開発が期待できるとのことです。

by Minyung Song

実際に、ディッキー氏はノースカロライナ州立大学の同僚らとともに、「可逆的に変形可能で機械的に調整可能な流体アンテナ」の開発に成功しています。ガリウム合金を柔軟なプラスチックで包んだこのアンテナは、もとの長さの10倍まで伸ばすことが可能で、切断されても容易につながることができるという特性を持っています。

by Michael Dickey

ディッキー氏らはさらに、ガリウムとインジウムの合金でできたナノ粒子をゴムではさむことで、可塑性の電子回路を作ることにも成功。ペンで基板をなぞることで、任意の電子回路を「手書き」することができるのだとのこと。また、アイオワ州立大学の材料工学研究者であるMartin Thuo助教授らの手によって、ゼラチンの塊やバラの花びらの上にプリントされた電子回路も開発されています


Thuo氏はこの技術を使用して、「脳に埋め込める柔らかい電子回路」を作ろうとしています。既に、金属製の電極を頭に埋め込むことでパーキンソン病やうつ病などの治療を行う脳深部刺激療法が実用化されていますが、柔らかくて形を変えやすい液体金属なら、より安全で簡単な手術でこの治療を行うことができます。

柔らかい電子回路を作ることができる液体金属は今後、柔らかいロボットのセンサーやアクチュエーターとして動作することが期待されています。ゴムや樹脂のような柔らかい素材は一般的に、ほとんど電気や熱を通しませんが、液体金属はどちらも非常に効率的に伝えることが可能だからです。また、カーネギーメロン大学で機械工学を研究しているカーメル・マジディ氏らは、柔らかいエラストマーに液体金属を注入することで、電気を加えると曲がる素材を開発しました。これにより、人工筋肉が実現するとのことです。

一方、ロボットとは別の分野で活用する試みも行われています。例えば、重金属や油分などで汚染された水をろ過できるフィルターや、少ないエネルギー消費で大気中の二酸化炭素を分解する触媒などです。

同様の機能を持つ触媒は既に開発されていますが、液体金属は微小な液滴を形成したり、表面以外での反応を促進したりすることができるため、固体の金属を使用した従来の触媒より格段に効率的に反応を起こすことができるのだとのこと。

こうした液体金属により実現する新技術についてディッキー氏は「技術的な問題以上の問題があります。それは、液体金属が単に魅力的だというだけでなく、潜在的に有用だということが広く受け入れられていないことです。つまり、課題のほとんどは単なる意識の問題でしかありません」と話し、液体金属が広く受け入れられることで、さまざまな技術革新が得られるとの展望を語りました。

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March 24, 2020 at 06:00AM
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